球体通信

Around Forty gay on the Kyushu Island

2019年の空気。

誰もがなんともモヤモヤした怒りを感じた「上級国民」問題。

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これまでなら数日で様々なニュースにかき消されていたと思うが、

今回はまだまだ収まりそうにない。

地味に日本人の精神的分岐点になる、そんな事案になるのかもしれないと思っている。

 

誰もが満たされずもがいている。

行き先の見えぬ不安に打ちひしがれている。

そんな中分かり易すぎる形で現れたこの世の不条理。

平たく成るはずの平成は数え切れない分断化と階層化の時代となってしまった。

ネット=リアルとなり不穏な空気はあっという間に九州の片田舎にも伝わってしまう。

残念ながらこれが平成最後の空気だ。

上っ面の新元号祝賀ムードもどこか虚しく感じられる。

 

経済が日本人のアイデンティティになったのはいつからなのだろうか。

日本経済絶頂のバブル期からバブル崩壊後の失われた30年。

金銭の貧しさは精神の貧しさへとタイムラグを経て及んで来てしまった。

 

実質賃金は下がり続け僕たちは確実に貧しくなっている。

でも、それを僕たちは認められずにいる。一億総中流社会の崩壊を。

現状認識さえ出来ずに前に進めるはずもなく僕たちは同じ場所で足踏みを続ける。

 

再び歩み出す為の痛みももう許容できないししたくない。

それはもう歩けない!と駄々をこねて泣きじゃくる子供のように思える。

かなりギリギリのところまで僕たちは来てしまっているのかもしれない。

 

さて、スガシカオのニューアルバム

労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』が4月17日に発売された。

ここ数日、ずっと聴き込んでいた。

痛々しいほど正直に自らを曝け出し、

2019年の空気を鮮やかに切り取った平成最後の名盤と言える今作。

 

こちらがトラックリスト。

 1.労働なんかしないで 光合成だけで生きたい
 2.遠い夜明け
 3.あんなこと、男の人みんなしたりするの?
 4.am 5:00
 5.おれだってギター1本抱えて 田舎から上京したかった
 6.ドキュメント2019 feat.Mummy-D
 7.スターマイン
 8.黄昏ギター
 9.マッシュポテト&ハッシュポテト

10.深夜、国道沿いにて

 

タイトルだけでもいろんな想像が掻き立てられおもしろい。

スガシカオらしい捻くれた切り口の歌詞はまた一段と研ぎ澄まされた印象だ。

20年以上のキャリアだがメロディーメーカーとしての普遍的な強さも同時に感じられた。

奇をてらった感じが嫌だという人もいると思う。

そんな人にはストレートなバラード「スターマイン」だけでも聴いてほしい。 

きっとそれだけではない何かを感じることができるはずだ。

全体的にはスガシカオ特有のファンク的アプローチのポップスだが、

これは間違いなく2019年の日本のブルースだ、フォークだ、ロックだ。

 

僕は都会に住んでいないしノンケでもないからそういう部分では共有できてない感覚は多々あると思う。しかし、スガシカオの音楽はそんなことさえも超えていく。

 

財布も心も貧しい時代に必死に長いトンネルの出口を求めて歌う。

スガシカオももがきながら2019年を生きていることを伝えてくれている。

そんな共有もできる作品と言えるのかもしれない。

 

平成の最後に音楽で希望を見たような気がした。