球体通信

Around Forty gay on the Kyushu Island

福島原発に行ったEさん。

今日、Eさんが福島原発へと出発した。九州北部から約1000キロの福島原発へと。

 

初めてEさんに福島原発に出張に行くことを告げられた時はさすがに僕も本当に驚いた。

Eさんは福島原発に新しくできる建屋の配管工事のため1ヵ月半、原発で働くという。

九州北部にいてまさか身近で福島原発に行く人が出るとは全く想像もしていなかった。

 

Eさんは現在、地元の大手鉄鋼会社の孫請けの正社員。

主な仕事は配管工の職人さんの手子(補助的作業)だ。

前々職で僕と同じ製造業の会社で働いていてそこでひどいパワハラを受け、次に就いたのが地元の大手鉄鋼会社の下請けの正社員。その後、その会社で長期の出張が頻発したために転職し、今の会社に入った。

普段は大手鉄鋼会社の広大な敷地内で働いていて安定して仕事もあるみたいだったのに。

結局、転職しても今回のような長期の出張に行くことになりEさんは少し落ち込んでいるようだった。

 

またEさんは詳しい仕事の内容はほとんど聞かされていないようだった。

行ってみないと詳しいことはわからないと言っていた。

わかっているのは南相馬の労働者用の寮に滞在しそこから福島原発に通うこと。

出張期間は1ヵ月半の予定だということぐらい。

原発のどんな施設の工事なのかとか、どれぐらいの放射線量なのかとか、防護服は着るのかとかそういうことも一切わかってないようだった。

 

僕は本当に心配になった。

Eさんは普通に仕事もやってきて3人の子供も立派に育てあげた大人の男性なのだけど、ちょっと僕から見て政治的なことや社会的なことへの関心が弱い気がしていた。

"被曝"ということについて本当にその怖さが分かっているのかな。。。

もちろん僕も素人だし自分でネットで得た知識が主だから本当に正確なことはわからないけど、「本当の本当に大丈夫なの???」と言う疑問が次々と湧いてきた。

 

衝撃だった原子炉建屋の水蒸気爆発からもう9年。でも、まだ9年。

人間にとっては十分すぎる時間でも放射能にとってはそんなことは関係ない。

Eさんがとてつもない線量のところで作業させられちゃうんじゃないかとか、想像してすごく怖くなった。

心の奥ではEさんに「行かないで!!!」と抱きついて叫びたかった。

Eさんに万が一のことがあったら、、と思ったらとても耐えられなかった。

でも、どこか冷静すぎる僕の中の何かがそれを止めた。

Eさんが嫌々ながらもこの仕事を受け入れいている以上、僕に何か言えるだろうか。

家族でも何でもない僕がEさんの仕事を辞めさせる。僕にそんな権利あるんだろうか。。。

また現実問題として一応の安全管理の下で行われるであろう作業を絶対危険だと言えるだろうか。僕にはそんな専門知識もないし正直なところわからないのに。

ただEさんを不安にさせるだけなら言わない方がいいという気持ちもあり、行かないでとは言えなかった。

 

Eさんが福島原発に行くことになって僕はこの国の今のことを何も知らないことに気付かされた。

以前は復興五輪だなんだと言っていたけどもう誰も言ってないし、もう福島原発のニュースなんてテレビやラジオでもほとんど流れない。

いつかニュースで見た無数に建てられた汚染水の貯蔵タンク、あれが今どうなっているのかもわからない。

ネットの情報もどこまで信じていいものなのか、正直なところわからないし。。。

 

昨日、出張前最後の温泉に二人で一緒に入ってきた。すごくいいお湯だった。

出張から帰ってきたらまた行こうとEさんと約束をした。

「目に見えないものだからわからない」。Eさんは放射能についてそう言っていた。

そう、目に見えないからわからない。わからないから不安になる。

4月、Eさんはおそらく元気にいつもの笑顔で帰ってくるだろう。

でも、Eさんの体が目に見えないところでどうなってるかなんて想像もできない。

今はただただEさんが変わらず健康で戻ってくることを信じたい。