球体通信

Around Forty gay on the Kyushu Island

いのちの木陰。

今年の夏ほど木陰のありがたさを感じた夏はなかった。

本当に命の危険を感じる酷暑だった。

逃げ込むように木陰に入り一息つくとほんの少し生き返る感覚を味わえた。

 

「いのちの木陰」。そういえばそんなタイトルの曲があった。

2010年に発表された佐良直美さんの約30年ぶりの芸能界復帰シングルだ。

 

佐良直美さんは1960年代から80年代にかけて活躍したトップスター歌手。

NHK紅白歌合戦に13回出場、さらに紅組司会も5回務め、ドラマ、バラエティと多彩に活躍した。

「世界は二人のために」「いいじゃないの幸せならば」など大ヒット曲も多数ある。

そんな佐良さんがなぜ30年も芸能界から消えることになったのか。

それは80年代に起こった同性愛スキャンダルが発端と言われている。


僕もリアルタイムでは知らないが、当時交際していたとされる女性タレントがワイドショーで二人の関係を暴露し大騒動になったということらしい。

この件について女性タレントの方はいろいろ話しているようだが、佐良さん本人は現在まであまり多くを語ってはいない。

なんせ40年も前の出来事。今より同性愛に対する偏見も大きくて騒動によって想像もできないほどの苦しみがあったのだろうと思う。

 

二人の関係のこと、本当のことは誰にもわからない。ただひとつ確かなのは、佐良直美というすばらしい才能が実に30年もの間日本の芸能界から消えてしまったこと。

でも、この「いのちの木陰」を聴いていると本当にブランクを感じさせない歌声でむしろ歳を重ねた分より魅力的ですらある。これこそが本当のスターなのだなぁと思う。

 

佐良さんは現在、那須高原で家庭犬のしつけ教室を主宰しているらしい。大好きな犬たちに囲まれた生活、それが佐良さんにとっての"いのちの木陰"だったのだろう。

www.zakzak.co.jp

 

佐良直美 / いのちの木陰 (2010) 作詞、山川啓介。作曲、渋谷毅

 

生まれて来たのは幸せになるため 誰かに愛され愛するため

それなのに世界は時々いじわるだね

そのまごころをほら人ごみが踏みつける

あなたのためにささやかないのちの木陰になりたい

傷だらけの悲しみたち 私にあずけて そっとまどろんで

 

子供の頃には夕焼けが教えた あしたは今日よりいい日になるって

それなのにあの時信じていた未来は

そのやさしさをほら弱さだとあざ笑う

あなたのためにすずやかないのちの木陰になりたい

倒れそうに疲れた夢 私にあずけてまた旅立って

 

あなたのためにささやかないのちの木陰になりたい

傷だらけの悲しみたち 私にあずけて そっとまどろんで

生まれてきたのは幸せになるため

 

昭和のプロフェッショナルな作詞家、作曲家、そして歌い手が再びタッグを組み生まれた「いのちの木陰」。歌詞の"それなのに~"のくだりは1番も2番も聴くたびに胸に迫るものがある。また、カップリングの英語バージョンである「The Shade of the Tree」もすばらしくて聴き惚れてしまう。

 

時折迷い立ち止まる時に心休める木陰があれば何とか命をつないでいける。 

この殺伐とした時代にこそ聴かれるべき救いの歌だと思う。

 

いのちの木陰

いのちの木陰

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いのちの木陰

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