球体通信

Around Forty gay on the Kyushu Island

田舎の普通をやりたかった。

今も住んでいる実家のすぐ近く。小高い山の途中にtaipon家の墓がある。

 

雑木林の中の5メートル四方ぐらいのスペースに等間隔に20基ぐらい。

 

墓と言ってもちゃんと墓石があるものは半分ぐらいで

 

あとは土をこんもり盛っているだけもの、それに大きめの石を置いているだけのものなど。

 

数年前まではお盆や年末には父親と掃除を兼ねた墓参りに山に行っていた。

 

伸びた笹を切ったり竹ぼうきで落ち葉を掃いたり。

 

でも、もうしばらく行っていない。

 

それは僕に田舎の普通ができないのだということがある程度はっきりしてきたから。

 

普通に恋愛して普通に結婚して普通に子供を作ってと言う田舎の普通。

 

それがどうやら僕にできなそうだと気づいた時、墓に行くのがつらくなった。

 

父親はご先祖様にできるだけの敬意を払ってきた。そういう生き方を僕に見せてくれていた。

 

僕もそんな父親のようになりたかったし、自然になれるものだと思っていた。

 

「○○じいさんのところに近所の〇〇さんのとこからお嫁に来て~そのあと、分家して~」

 

父親はたくさんtaipon家の歴史を話してくれた。

 

墓というわかりやすい形で家の歴史を見せられるとやはりそこに重みを感じる。

 

大そうな名家でもないただの田舎の百姓の家系なんだけど。

 

都会にはもう家とか言う感覚はないのかもしれない。あってもそこに重みはないのかもしれない。

 

けれど、僕は今もその重みを確かに感じている。

 

姉夫婦は数年間の不妊治療の末、やっと子供を授かった。

 

そんな様子を端から見ていると男女が出会って命をつなぐことの奇蹟を本当に感じる。

 

命をつなぐことが当たり前だと思っていた。

 

それができない自分を認めたくなかった。ずっと気づいていたけど目を伏せていた。

 

僕はただ田舎の普通をやりたかった。