キャッチーなタイトルである。そのためあまり期待していなかったがいい本だった。
久世芽亜里 著「コンビニは通える引きこもりたち」。
「引きこもり」の本は割とたくさん出ていると思うけれど、
目につくのは学者や研究者の方々の本が主なものだったと思う。
民間の引きこもり支援団体の著者の言葉は当事者を大事にしつつも
時に厳しい決断も必要ということをきちんと書いていて好感が持てた。
実際、何年も引きこもってしまった後に何の波風も立たせずに解決するなど無理な話。
それは"引き出し屋"と呼ばれる暴力的で人権を無視した業者のやり方は論外としても
しっかりと関係性を築いた上で踏み込むべき時には一歩踏み込まなければ解決はないということなのだろう。
行政サービスというものは基本的に申請主義であり引きこもり支援においても
当人が来なければ何もできないということがあるそうだ。
簡単に引きこもりの人達を連れ出せるはずがなくそこで動き止まってしまう。
かといって民間でもなかなかいい団体に巡り合うことは難しいとも書いていた。
あらゆる行政サービスでミスマッチが問題になっているが、引きこもりに関しても同じということなのだ。
またこの本では若者の生き方・働き方と引きこもりの問題はリンクしているとも書いている。
そもそもの人生観、仕事観が違うことで起きる親子間の行き違いはすごく理解できたし大事な指摘だと思う。
引きこもりの問題は親の問題であり子の問題であり社会の問題であるということがはっきりとわかる。
不登校からの引きこもりよりも一度社会に出てからひきこもる人の方が割合として多いというのは意外だった。
ありがちな引きこもりのパブリックイメージとは違うリアルな現場の声。
それに触れることができるのは当事者やその家族、周囲の人たちにとってもプラスになるだろう。
以前からの不景気にこのコロナ禍である。
新たに引きこもってしまった人も多いかもしれない。
現実を冷静に見つめ問題解決の糸口になりうる本だ。関心のある人は読むべきである。