10月4日、松任谷由実50周年ベストアルバム「ユーミン万歳」が発売された。
それに先駆けて先月24日、行われた"ユーミン万歳!"視聴会。
ユーミンの公私ともにパートナーの松任谷正隆氏と今回のベストアルバムの
最新リマスター&リミックスを担当したGOH HOTODA氏がたっぷり語ってくれている。
今回の1時間20分の動画はかなり専門的な話もしているが、必見な内容。
グラミー賞も受賞している音楽エンジニアGOH HOTODA氏。
2014年からユーミンチームと仕事をしており、2019年のサブスク解禁時に全曲リマスタリングを担当したことでも話題となった。
収録内容として新曲以外の50曲中リミックスは31曲、音の差し替えが行われたのが11曲。
全曲最新の2022年ミックスが施され、また立体オーディオ、空間オーディオと呼ばれるドルビーアトモス化もされたということだ。
GOH HOTODA氏によると今回の曲を絵画に例えると絵の額縁が変わったイメージだという。
その言葉の意味が実際にApple Musicの空間オーディオで聴いてみるとよくわかった。
今回、ドルビーアトモス化されたユーミンソングは本当に立体的で
今までいくつか聴いてきた他の空間オーディオの作品より繊細に再構築されている感じがする。
ただ馴染んできた昔の音源の方がいいと思う曲も正直ないわけではない。
新たな音が足されていたりかなり印象の変わった曲もあるので。
ないわけではないが、これは新しい音の体験なのだと解釈した。
空間オーディオ自体まだ新しい技術なのでこれ自体に慣れない人もいるかもしれない。
映像で考えても2Dから3Dへの変化はかなり大きなものだと思うからだ。
松任谷正隆氏は90年代から3Dバーチャルオーディオシステムに取り組んでおり
それこそドルビーアトモスのような新しいことに常に挑戦してきた。
今回のベストアルバムだって本当は"過去"の詰め合わせでも十分だったはずだ。
ラジオのリスナーによるリクエストベストの側面もあったのだからなおさらである。
今回のリリースに関するインタビューで〈ユーミンは変わり続けなければ現在(いま)はなかった〉ということを強調していたと思う。
歴史を重ねれば重ねるほどリスナーは保守化する。
今回の曲の変化も好意的に受け入れられる人ばかりではないかもしれない。
アラフォーの僕であってもある程度は保守化を感じており、新しいものを受け付けなくはなっている。
それでもユーミンチームはリスクを取ってでも2022年のユーミン像を提示した。
"常に新しいものをお見せします"というK-POPのカムバックシステムが問題になっていたりする昨今。
立ち止まらずに常に新しい姿を見せてきたユーミンの50年のハードさがよりわかるのである。
保守的な日本に革新をもたらし続けたユーミンはこれからも新しいものを求め続けるのだろう。
それは物事は一瞬で色褪せることを誰よりも曲で表現してきたユーミンだからこそなのである。