アラフォーで読むのは失敗だったかと思ったが、まぁ最後まで読んでよかったと思う。
老年期の前の中年期を「老い」と向き合い
どう過ごしてくべきを考えていく、野沢直子著・「老いてきたけど、まぁ〜いっか。」。
野沢直子も人の子で人の親なのだという当たり前のことを思える本だった。
突飛なサブカル人だと決めつけて読み始めると少々拍子抜けする内容かもしれない。
野沢直子自身、同世代の読者層を想定して書きながら「老い」について考えていったようで、本当に同世代の人にはいいきっかけになる本だろうなと思う。
はっきり言えばそこまで大層な主張は書いてない。
けれど、野沢直子の提案する中年期の過ごし方は間違いなく彼女の経験を通して獲得した人生哲学が滲み出しておりそれは彼女なりの答えなのだと思う。
あくまで子育てや仕事がひと段落した50代向けのメッセージではあるが、"自分の楽しいと思えることを自分のためだけに"ということが全体で一番の主張だろう。
そのためには自分を大切にすること、自分を大切にするためには場合により生きる場所を変えることも必要だと説く。
30年前、売れっ子タレントの立ち位置を捨て単身渡米した野沢直子。
あちこちで語っているように伝説の番組「夢で逢えたら」で共演した人(特にダウンタウン)の才能に圧倒されたことが渡米のきっかけになったとされる。
世間の目から見ればこの世の春に見えた絶頂期の野沢直子。
しかし、当時の彼女は環境を変えることを選んだ。
それは自分と向き合い世間ではなく自分が求めるものを選んだからなのだろう。
世間に合わせていても世間は何もしてはくれない。
野沢直子は世間に翻弄されるより世間を翻弄する人生を選んだのだ。
さすがに野沢直子ほどの大胆なことはできなくても少し自分に主体をずらして考えるだけでも違うかなと思う。
これまで僕は他人の話を聞くにしても本を読むにしても割と属性で切り捨ててきた。
あの人は子供がいる人、結婚してる人、ストレートの男性とか自分とは違うと線を引いていたと思う。
でも、この本を読んでいてそういうのはもったいないなとも思った。
老いも死も誰にも平等でそこに世間の評価軸は及ばない。
ただ老いてただ死にゆく。
生きにくいと言われる時代にどれだけ自分に主体がおけるか、それが試されていると感じる。
失われた30年。日本にいなかった野沢直子の考えは昭和だ、バブルだと揶揄する声もあるかもしれない。
しかし、急激に硬直化してきた日本の中でその経験に基づいた考えは、より自由で過ごしやすい日本に繋げるヒントが詰まっているとも言えるのである。