政府の新型コロナ対策分科会メンバーの釜萢敏(かまやちさとし)氏が出演し、玉川徹さんやこの番組から一躍テレビスターとなった岡田晴恵さんからの質問に答えていた。
釜萢氏は、ほぼ全編政府のスポークスマンと化していてそこに専門家としての発言はなかったように思えた。「PCR検査は偽陰性がー」とか「経済が回らなくなるから緊急事態宣言はー」とか、結論ありきの詭弁を繰り返しまともな返答はなかった。
とにかく政府はPCR検査はどうしても増やしたくないこと、再度の緊急事態宣言はどうしても出したくないことだけは氏の発言からよく伝わってきた。
玉川さんの厳しい追及もよかったが、一番印象に残ったのは、岡田さんの最後の方の発言。「経済や政治の話は政治家に任せて、専門家は専門家の話をした方が国民は納得する」という旨の発言だった。いつものやさしい口調ではあったが、釜萢氏の御用学者っぷりを真っ正面からぶった切っていて少しスカッととした。
『専門家として話をしない専門家は専門家ではない』。岡田さんはそう言っているように思えた。
放送後、僕は9年前の福島第一原発事故直後のことを思い出した。
あの時もテレビには専門家といわれる人達がたくさん出ていた。
おそらく現実をわかっていたとは思うのだが、彼らが発言していたのは最悪の事態
ではなく耳障りのいい話ばかりだった。
あきらかに大変なことが起こっているのに「そんなことはありえない」「心配ない」と。
日本の歴史を変えたあの大事故から10年近く経っても変わらず御用学者は存在している。
聞いた話によると、政府の諮問会議に呼ばれると勲章をもらえるのだそうだ。
名誉欲を刺激されそういうものに惹かれる人もいるのだろう。
もちろん、わかりやすく利権もあるのだろう。
だが、御用学者が生まれてしまうもっと大きな理由は、国の予算を自分たちの組織に引っ張って来れるからなのだろうと思う。そこには真面目に医療や研究だけをしていても報われない現実が背景にあり、それならば政府におもねって予算を取りに行くというのもある意味自然な流れで一概に御用学者を責めて済む問題ではない気もする。
御用学者にももちろん責任はあるし、彼らの責任は決して軽くない。
だが、一番責められるべきは御用学者の陰に隠れ、責任を取ろうとすらしない政治家たちだろう。
根本的なシステムから変えなければ御用学者の生産は終わらない。
僕たちがクソみたいな政治家を選んでいるうちは決してこの現実が変わることはないのである。
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