「非・バランス」は2001年に公開された日本映画です。
内容を本当に簡単にまとめると、いじめられっ子の少女がお釜のキクちゃんとの出会いを通してちょっと成長し自分の中の壁を乗り越えていくというひと夏の物語です。
僕にとって大好きな映画であり、思春期を思い出す大事な映画でもあります。
僕は特別いじめられていたわけではないのですが、コミュニケーションを周りとうまく取れる方ではありませんでした。学校生活の息苦しさをどこかで感じていた時に当時自宅に設置されたばかりのWOWOWでこの映画を見ました。主人公のチアキの『一、クールに生きていく 二、友達は作らない』という孤独な宣言は、リアルタイムで悩んでいた僕の心にすごく届きました。
この映画の原作は1996年に発表された魚住直子さんの同名児童向け図書です。
映画を見た後に原作を読みましたがこちらも素晴らしかったです。
映画と原作との違いはお釜のキクちゃん役が年上のお姉さん的女性であることです。
登場人物の設定を変えてしまうことは書籍を実写化するに当たってはマイナスになることが多い気がします。けれどもこの映画はそんなことはなく、原作も映画もどちらも素敵な作品だと思えました。しっかりと芯を食っていればそう簡単に物語の良さは崩されないのです。
以下、「非・バランス」の予告編動画です。
妙に安っぽく時代を感じる出来なので、これは見ずに本編を見たほうがいいかもです。
出演した役者さんに関して言うと、主演の派谷恵美(はたちや・めぐみ)さんがすばらしい。ありきたりな表現ですが、本当にみずみずしいのです。棒読みっぽく聞こえるところがなくもないのですが、確実に彼女と主人公のチアキがリンクして台詞が生きているのが感じられました。後から振り返れば一瞬の輝き、その美しさと儚さが映像に詰まっています。
撮影当時の彼女の日記風の記事があったので紹介します。時代を感じるサイトです。
そしてなんと言っても小日向文世(こひなた・ふみよ)さんのキクちゃんも圧巻でした。キクちゃんはそこに実在しているように生き生きとしていました。
ただ滑稽なだけでなくただ切ないだけでもなく必死に生きる一人のお釜を感じられたのです。
そこには紛れもなく二人の生きている世界がありました。
けれどもこの物語の力なのでしょうか。すごく生々しい思春期を切り取っているような内容なのにとてもファンタジーに感じられるのです。これは監督の富樫森さんが原作の良さを損なうことなく120%表現できているからではないでしょうか。
光に包まれているようなあたたかい未来を感じられるラストシーンは大好きです。
一時期DVDは絶版でなかなか手に入りにくかったためにアマゾンでも1万円以上しましたが、今はアマゾンプライムやYOUTUBEムービーなど各種動画配信サイトで見ることができるようになったため値下がりしているようです。
ヒットした映画ではないですが、確実に残っていく作品だと思います。
来年は僕も35歳。もう一度思春期の想いと向き合い、非・バランスな僕自身にも向き合うためにこの映画を見返そうと思います。